【境界非明示の売買】売主が相続人で境界標が行方不明の現状渡し案件における、契約書(瑕疵免責)作成事例


今回は、大阪市中央区谷町での実務事例をもとに、境界非明示・売主相続人・現状渡しでの不動産売買契約書に盛り込むべきリアルな特約条項の作成例を解説します。

1. 物件概要
  • 所在:大阪市中央区谷町○丁目
  • 地目:宅地
  • 地積:85.50平米(公簿)
  • 現況:大正時代に建てられた木造2階建の古家あり(空家)
  • 売主:A(被相続人Bの長男。自身は東京在住)
  • 買主:C(地元の不動産買取業者・再開発目的)
  • 状況:隣地はRC造のビルと、ブロック塀が越境している可能性のある古い民家。道路舗装のやり替えにより、前面道路(大阪市道)との境界ピンも消失。

2. 契約書にそのまま使える「特約条項」作成事例
実務上、境界のトラブルを防ぐためには「売主は探したが分からなかった」「買主もそれを承知で買った」という事実と責任の所在を、一言の隙もなく文章化(文言化)する必要があります。
【特約条項:境界非明示および現状渡し】
第〇条(境界の非明示及び現状渡し)
  1. 本物件は、売主が相続により取得したものであり、現況において境界標の全部又は一部が亡失している。売主及び買主は、売主が買主に対し、本契約締結時及び引渡し時において、現地における境界標の指示及び隣地所有者との境界確定(境界確認書の取得等)を行う義務を一切負わないことを相互に確認した。
  2. 買主は、本物件を現状のまま(現況の目視できる状態のまま)受け入れるものとし、将来において公簿面積と実測面積に差異が生じた場合、又は隣地との境界紛争が生じた場合であっても、売主に対して一切の異議申し立て、損害賠償請求、代金減額請求、又は契約解除の主張を行わないものとする。
  3. 本物件の売買代金は、公簿面積を基準とした総額固定とし、将来実測が行われた場合であっても、実測清算は行わないものとする。
【特約条項:契約不適合責任の免責】
第〇条(契約不適合責任の免責)
  1. 売主は、本物件に関し、種類、品質又は数量に関して本契約の内容に適合しないもの(以下「契約不適合」という)があったとしても、買主に対して、履行の追完請求、代金減額請求、損害賠償請求及び契約の解除について、一切の責任を負わないものとする。買主はこれを承諾のうえ本物件を買い受けるものとする。
  2. 前項の契約不適合には、土地の隠れたる瑕疵(土壌汚染、地中埋設物等)、建物の瑕疵(雨漏り、シロアリ被害、構造耐力上主要な部分の木部腐食等)、及び隣地からの越境物(ブロック塀、庇等)の有無、並びに都市計画法等の公法上の制限に関する不適合を含むものとするが、これらに限られない。ただし、売主が自ら知りながら買主に告げなかった事実については、この限りではない。

3. 実務における重要説明とリスク回避のポイント
① 「知りながら告げなかった事実」の確認(民法566条ただし書)
民法上、いくら契約書で「全面免責」と謳っていても、売主が知っていて隠していた不都合(例:実は過去に隣人と境界でもめたことがある、等)については免責されません。
相続人である売主に対し、「本当に何も聞いていないか」のヒアリングシート(告知書)を書いてもらい、エビデンス(証拠)を残すことが仲介会社の保身(義務違反回避)につながります。
② 越境物への対処
大阪市内の古い街区では、お互いのブロック塀や屋根の庇(ひさし)が数センチメートルずつ越境し合っているケースが日常茶飯事です。
今回は「非明示」ですが、もし目視で明らかに越境している(あるいは越境されている)ことが分かる場合は、特約に「越境物の存在を容認して買い受ける」旨を明記しないと、引渡し後に「聞いていない」と揉める原因になります。
③ 買主が「宅地宅建取引業者」であることのメリット
売主が一般個人で、買主も一般個人の場合、ここまでガチガチの免責特約は心理的心理抵抗を生みます。
しかし、本事例のように買主が「不動産買取業者」であれば、業者側は「境界リスクや地中埋設物リスク」を織り込んだ安い価格で仕入れているため、この特約をすんなり受け入れます。売主にとっても、「後々のトラブルをすべて遮断できる」という最大のメリットがあります。

4. まとめ
大阪市中央区をはじめとする、歴史のあるエリアの「相続×現状渡し」案件は、特約の作り込みがすべてです。
「境界が分からないから売れない」のではなく、「境界が分からないからこそ、そのリスクを価格に反映させ、契約書で売主の責任を完全に切り離す」のがプロの宅建業者の腕の見せ所です。

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  • 【特殊・難解物件の場合】 権利関係が複雑な相続案件や、一棟収益、告知義務(心理的瑕疵)が絡む
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