【境界越境あり】隣地のブロック塀や屋根の軒が対象地に越境している場合の、覚書締結を条件とした契約書事例


今回は、大阪府枚方市三矢町(旧東海道周辺の歴史ある住宅街)の戸建て物件をモデルケースに、弊所が不動産会社様から「物件調査および重説・契約書作成業務」を委託され、越境トラブルを回避するために実務で組み込んだ「覚書締結を条件とした特約条項」の事例を解説します。

1. 物件概要と越境の状況(枚方市三矢町 戸建て事例)
対象地は、京阪本線「枚方市」駅から徒歩圏内にある、昭和50年代に建築された木造2階建ての住宅です。不動産会社様からの委託を受け、現地調査および法務局での図面照合を行ったところ、以下の2点の越境が発覚しました。
  • 東側隣地のブロック塀(基礎部分含む): 対象地側に約5cm並行して越境。
  • 北側隣地の平屋の軒(屋根先・雨樋): 対象地の上空に約15cm空中越境。
売主様・買主様双方にとって、将来的な建て替えや土地の価値維持においてトラブルの火種となり得る状態でした。
2. 物件調査・重説作成の立場から見る実務の初期対応
弊所は仲介業者ではなく「物件調査・書面作成の専門家」として入るため、客観的かつ法的なリスクヘッジを最優先します。
まず、現況の越境状況を現地で実測(簡易計測)し、重要事項説明書の「寸法の差異・境界に関する事項」および「敷地と隣地との関係」の項目に明記します。写真や図面を添付し、買主様に対して「目視および計測上、明確に越境している事実」を事前に認識してもらうことが大前提となります。
その上で、売買契約を安全に進めるために、「決済(引き渡し)までに、売主様の責任と負担において、隣地所有者との間で『越境物に関する覚書』を締結すること」を契約の停止条件、または義務として設定するスキームをご提案しました。
3. 実務に直結する「契約書特約条項」の記載例
実際に契約書に盛り込む、実務的な特約文言のモデルケースです。売主様の義務履行を明確にし、万が一締結できなかった場合の解除権(白紙解除)について言及しています。
(隣地越境物に関する特約)
第〇条(覚書の締結)
売主は、本物件東側隣地(枚方市三矢町〇番〇)のブロック塀、および北側隣地(枚方市三矢町〇番〇)の建物の軒先・雨樋が、本物件敷地(地上および上空)に越境している事実を確認した。
2.売主は、自己の責任と負担において、本物件の残代金支払日(引渡日)までに、上記各隣地所有者との間で、後記の内容を含む「越境物に関する覚書」を締結し、これを書面にて買主に提出しなければならない。
【覚書に含むべき主要内容】
① 越境の事実を相互に確認すること
② 将来、隣地建物等の建て替え、または解体を行う際には、越境部分を是正(撤去)すること
③ 本覚書の効力は、売主・隣地所有者それぞれの承継人(買主や相続人)に対しても承継させること
3.万が一、売主の責めに帰すべからざる事由により、引渡日までに前項の覚書締結が完了しない場合、買主は本契約を無条件で解除することができる。この場合、売主は受領済みの手付金等を受領時と同額にて遅滞なく買主に返還するものとする。
4. 覚書に「承継文言」を入れる重要性
調査・重説作成の実務において最も見落としてはならないのが、覚書の「第三者承継(効力の承継)」です。
「現所有者同士」の間だけで有効な約束にしてしまうと、将来的に買主様がその土地を第三者に売却する場合や、隣地が相続されて所有者が変わった場合に、再び越境問題が白紙に戻ってしまいます。
そのため、重説・契約書の作成段階から、不動産会社様に対して「覚書の雛形には必ず『当事者双方は、本覚書の権利義務をそれぞれの承継人に承継させる』の一筆を隣地所有者から貰ってください」とアナウンス徹底することが、のちのトラブルを防ぐプロの仕事となります。
5. まとめ
越境物がある物件は、そのままでは買主様の住宅ローン審査(特にネット銀行や大手都銀)に影響が出るケースも多く、仲介会社様にとっても契約手前の大きなハードルとなります。
単に登記簿や公図を調べるだけでなく、現地の実況に応じた最適な特約・重説の文言作成が、不動産取引の安全性を支えます。

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